もうすぐフレンチオープンが始まりますね。日本ではあまりなじみのないレッドクレーですが、僕もこのレッドクレーでプレーするのがとても好きです。
弱い力で重たいものを動かせるテコの原理のように、相手の重心を意識的にずらすことができればスペースがなくとも簡単にエースを奪うことができるのです。アイディアをそのままコートの中で表現できるのがレッドクレーの特徴です。
ただしそれら感覚をつかむためには最低2週間ぐらいのトレーニング期間が必要です。練習しないでいきなしレッドクレーに入るとひどいことになります。
幼少の頃からレッドクレーに親しんできたヨーロッパや南米の選手は身体の使い方や相手のバランスの崩し方、前後の動き方など自然と身に付いています。
そんな選手達といきなしレッドクレーで戦うのはかなりのハンディであります。そう考えると錦織選手がバルセロナやマドリッドなどでレッドクレー育ちの選手を翻弄するプレーは考えられないことです。
ハードからレッドグレーにサーフェスが変わった時にやったこと、やらなかったから試合に負けてしまった、レッドクレーの戦いかたなど含めてお伝えしていきたいと思います。
ボレーはスライドして打つ
これは以前バルセロナオリンピック予選の時にブラジル人のコーチに言われたアドバイスです。
僕はネットプレーヤーでなく、しかもレッドクレーなのでそこまで大切なことではなさそうですが、何故かとてもこのアドバイスを鮮明に覚えています。
そしてルーキーであった僕は著名な日本のプロ選手達を翻弄したのです。
やはり最後一球をボレーで仕留めるシチュエーションが多いのでその時に勢いづいた身体をスライドしながら打つのはゲームをフィニッシュするための動きのテクニックとしてとても重要でした。
通常より3メーター下がる
これはハードからクレーに移動してきた次の週すぐに試合があったのですが、ハードの戦い方が抜けずにしかも決勝戦を戦った後なので調子も悪くなったのでそのままのプレーをしてしまいました。
スペイン選手の後方から繰り広げられる重い跳ねるボールをベースラインの後ろで打つのはかなりスイートスポットを外されてしまいすぐに相手のチャンスボールになってしまいました。
これではいけないと1回戦敗退してすぐに通常のポジションから3メーター下がるようにしました。
そこから僕自身も重いボールを打つことができボールが短くなったら素早く前に入って攻撃できるようになりました。
もちろん最後の一球をボレーで仕留めることもできるようになりました。
クロスのカウンターだけに頼らない
これは今ではTo The Backhandと戦術的に取り組んでいますがまだまだ感覚的にしか自分の中では理解されていませんでした。
相手のバックハンドダウンザラインに対してランニングショットでクロスに打つ事だけにならないように、相手のバックの高いところに打ち、一度ニュートラルに戻します。
またクレーなので相手の重心の逆をつくこともできるで、一気にオフェンスへのポジティブ・トランジションに繋がります。
レッドクレーのピート・サンプラスはレッドクレーではここで苦労をしていました。通常ハードだとランニングショットクロスコートが効いてアプローチに繋がったりしましたが、レッドクレーでは無効化されてしまいます。
トップスピンとラットショットを明確に分ける
球足の遅いレッドクレーだからこそラットショットの効果が効いてきます。その差分を作るためにもう跳ねるトップスピン、そして滑るラットショットの使い分けをより明確に分けて打ちます。
最後に
レッドクレーでは対戦相手を力やスピードで捻じ伏せることがとても難しいコートです。
反対に相手の重心の逆をつけば特別なショットでもないのにいとも簡単にエースを奪えたりするのでとてもゲーム性が高くとてもクリエイティブなアイディアを駆使して戦えるサーフェスであります。